歯 科

歯科医院は恐怖の館か
歯学博士
飯田 一実

 日本における歯科医師数は人口比で見ると、人口10万人につき71人(2000年)で、しかも我が国は国民皆保健なので他国と比べても歯科受診率は高いと思うのですが、実際はアメリカの約半分です。当然口の中のむし歯の数はアメリカ人より多く、12歳児では日本人が2.4本なのに対して、アメリカでは1.3本となっています。
 大人でも歯科の治療を受けるのは気の重くなることですが、これは諸外国でも同じようです。
 イギリスの調査によると、人々が悩むことの上位に必ず上げられることに、「歯科医院に行くこと」があります。
 心理学的に見ると、歯科医に対して恐怖心を抱くのは、親が子供の前で歯科治療の恐怖・不安を不用意に話をし、子供は歯科治療の大切さを理解できぬまま、恐ろしさだけが伝えられてしまうからのようです。その結果、歯科治療を受けたことがなくても「怖い」ものと思うのでしょう。また怖いという先入観を持って治療を受けるので、大した痛みでなくても大げさに反応して、痛く・不快なことであると心にとどめて、それを自分の子供に伝え世代から世代へと恐怖心が受け継がれて行きます。
 2歳に満たない子供でも、治療台の上では泣きさけび、口を開けようとしないことがありますが、こんなときは無理に治療を開始せず、歯科衛生士や受付係の人とお話だけをして、医院の雰囲気に慣らしてその日は何もせずに帰宅してもらった方が、その後の治療のためになることがあります。
 親が歯科治療に対するマイナスのイメージを不用意に子供の前で話すことは、その子供にとって決して良いことではないことに気が付いて欲しいものです。
 幼少年の頃から定期検診を行って、予防と早期治療を実施することが結局、中高年に成ってからも快適な食生活を続けることができ、健康寿命を延ばすことになります。