歯 科

歯をいつまでも健康に
歯学博士
飯田 一実

 口腔領域の主な疾患の一つにむし歯が挙げられます。私たちが日頃経験する疼痛のうちでも、むし歯による痛みは最も激しい痛みの一つではないでしょうか。この疼痛に襲われると仕事の能率は著しく低下し、成人がむし歯の疼痛に悩まされることは、まさに社会の大きな損失につながると考えられます。

 加齢と共に身体の筋肉、臓器に衰えのくることはいたしかたのないことですが、医学の進歩につれて私たちの平均寿命も大きく延び、今や日本は世界一の長寿国になりましたが、せっかく長生きできるのなら、毎日の食事を自分の歯で美味しく食べて楽しい人生を過ごしたいものです。最近私たちの生活は昔とは比べものにならぬほど快適な毎日を過ごせるようになりましたが、歯に関してはなんといっても天から授かった自分の歯に勝るものはありません。むし歯になったり、喪失した歯は元には戻りません。
歯は大部分が無機質で出来ていて、自然治癒が無いので、その対策としては早期発見・早期治療が大切です。毎日の手入れ次第で天寿を全うするまで私たちに計り知れない恩恵をもたらしてくれ、お金や宝石以上の価値を与えてくれるものです。

 それではこの大切な歯を健康な状態に保つにはどんなことに気を付ければ良いのでしょうか。むし歯は歯が存在してそれに細菌が存在し、そして栄養分があることが必要です。むし歯をつくる食物のうちで代表的なものは砂糖であり、砂糖の消費量とむし歯の罹患率との関係は非常に関連があります。また糖分の過剰な摂取は肥満にもつながることなので気を付けねばならぬことでしょう。また永久歯は生後間もなくすでに顎骨内で出来始めているので、幼児期から歯の形成に大切な良質の蛋白質やビタミン、カルシウムを取るよう子供の食事にも気をくばり丈夫な歯を作ることが必要です。

次に細菌、特に歯垢の中にいるミュータンス菌を除くために歯ブラシで歯垢を丁寧に取り除くことが大切です。そのためには食後のブラッシングが必要です。朝洗顔時に歯磨きをしてその後朝食を取りそのままの人がいますが、朝起きた時は口の中が気持ち悪く、歯を磨いてさっぱりしてから食事をしたいのは分かりますが、むし歯や歯周病の予防のためには食後に磨くことが必要です。汚れたお茶碗を洗うのと同じことです。会社にも歯ブラシを用意して置いて昼食後にも歯磨きをして欲しいものです。この際、歯磨剤を使う必要はなく、歯ブラシだけでテレビを見ながらでも、新聞を読みながらでも磨いてください。歯磨剤を使うと洗面所にまで行かねばならず、つい億劫になり長続きしないのではないでしょうか。最後に歯磨剤を使うことはかまいません。この習慣が身に付くと、食後歯を磨かないと気持ちが悪く、磨かないではいられないほどです。また寝る前の歯磨も大変効果があるので丁寧に磨きましょう。
最後に舌の表面も軽く磨くようにすると、ダイエット効果もあるようです。舌の表面をきれいにしておくことにより、味覚が鋭くなり、うす味に慣れ、食べ過ぎによる肥満を防ぐことになります。
むし歯は自然治癒のないことは先にも述べましたが、もう一つの特徴は初期には痛みがないことです。そのために定期的に検査を受けることが大切です。

むし歯を指摘されても、初期の状態であれば短期間の通院で処置でき、時間も費用も最小で済みます。治療後は正しい手入れを心がけたいものです。