歯 科

歯ブラシ
歯学博士
飯田 一実

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 歯ブラシの起源は人類が農耕を始める以前から、木の枝のブラシで歯を磨いていたようです。
 書道の筆も絵画の絵筆も歯ブラシもその名前はブラシと言い、木の枝、特にヤナギの枝はしなやかな繊維で出来ていて、枝の端を石で叩いり噛んだりしてブラシとして使用していたと思われます。

 日本にはじめて木の歯ブラシが仏教の伝来の時に伝えられ、高僧や貴族が礼拝をする時に身を清めるのに使用したようです。
アメリカでも食後や寝る前の歯磨きは、それ程古くからのことではなさそうです。朝起きたら洗面をし、歯を磨くことは一日の始めに身を清める昔からの習慣であって、西洋も東洋も同じようです。

 日本で今様の歯ブラシが作られたのは、明治5年ころでクジラのひげの柄に馬の毛を植えたものでしたが、4つ足をきらう当時の人には受け入れられず、売れませんでした。
第二次世界大戦後、アメリカでナイロンを使用した歯ブラシが用いられ、それが世界中に広まりました。熱湯に弱いのが欠点ですが、衛生的であり、大量生産が可能で、値段も安く広く普及しています。

 日本で歯ブラシが一番良く売れるのは大晦日で、日本人の新年を迎える気持ちが感じられます。
歯ブラシの補助用具として、デンタルフロスは歯の隣接面や歯肉縁下の清掃、歯間に入った食片を取り除きます。
ラバーチップは歯肉炎を起こし易い歯間乳頭を圧迫したり、振動を与えてマッサージしたりして隣接面、歯頭部のプラークを取るのに役立ちます。

 歯間ブラシは清掃し難い隣接面を清潔にし、歯間乳頭にもマッサージ効果を与えます。これは歯間乳頭が退縮して歯間空隙がある場合に使用します。
木製チップはナイフの形をしていて、ラバーチップと同じ目的で使用されます。歯肉のマッサージと共に隣接面のプラークを取ります。歯の舌側に使用するのは困難です。
ウォーターピック(ジェット水流洗口器)はプラークを取り除くのは不十分で、これを過信してブラッシングを怠るのは好ましいことではありません。

 義歯用ブラシは部分義歯装着者には是非必要なものです。バネのかかる歯はむし歯に成り易く、歯周ポケットも深く成り易いものです。バネの内側に義歯用ブラシの硬い毛束の方でていねいに汚れを落として下さい。また不潔な義歯の装着により圧迫や細菌毒素が床下粘膜に炎症を起こします。その影響で顎骨の吸収が起こりますので気をつけたいものです。
夜間は義歯をはずし、圧迫や細菌の刺激から粘膜や歯を守る必要があります。義歯洗浄剤だけでに頼らず、ブラシで良く清掃してから清掃液を使用することが大切です。薬剤はあくまでも補助的なものと考えるべきです。総義歯を使用している人も同じです。
電動歯ブラシの細かな振動と刷掃は効果が高いようで、特に高齢者や手の不自由な人には良いものです。
口の中の状態、歯列の状態は複雑で、一つのブラシだけでは不十分なので何種類かの清掃用具を使用することが必要です。