歯 科

誤嚥(ごえん)性肺炎について
歯学博士
飯田 一実

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 日本人の健康寿命と平均寿命との間には5歳以上の差があると言われていますが、それだけ要介護者が多いことでしょう。

 日本人の死亡原因の第4位は肺炎で、特に高齢者の罹患率が高く、非常に致死率の高い病気で、その多くが口腔内細菌の吸引や嚥下により発生する誤嚥性肺炎であることが指摘されています。
平成10年度の厚生省老人保健強化推進特別事業の研究では、寝たきり者の口腔ケアが誤嚥性肺炎の予防に有効であることが認められています。
要介護高齢者の約20%に摂食・嚥下障害があり、脳血管障害・痴呆等にも発現することが多くみられます。
症状は食べた時にむせる。食べた時に咳が出る。声がかすれる。痰の増加がある。食べた時にのどに違和感や食物が残っている感じがする。食欲が低下する。食事時間が延びたり、食べ方が変わるなどです。注意する点は、食事は上半身を45度以上にする。座れない時は麻痺側を上にした側臥位にする。水分は誤嚥し易いので口の中への注入に注意し、吸引を十分に行うことです。

 予防としては良く噛んでゆっくりと食事する。障害の程度に応じて食事を工夫し、食物の形態を配慮することが必要です。
誤嚥性肺炎は誤嚥による気管支・肺へ唾液・食物等の異物による炎症で、ほとんどが機能が低下した虚弱な高齢者に起こります。
症状は肺炎(発熱)を繰り返す。食事中・食後にむせたり、せきをすることが多い。食後しわがれ声がある。夜中にせき込む。口の中に食物が残っている。食事時間が長い。脱水・低栄養状態にある。拒食がある等です。

 予防としては口の中を清潔にし、プラークコントロールを重点的に行う。特に寝る前に義歯・口腔清掃をていねいに行い、食物の残りや舌苔や歯垢を取り除く。誤嚥し易い食品は、調理を工夫して形状・性状を変える。食事中、食後は座位にする。尚誤嚥し易い食品としては、水・お茶・味噌汁などのさらさらした水分状のもの。のり・わかめ・葉物の野菜などの口の中に付着したり、広がるもの。オレンジジュース・酢の物など酸味が強く、むせ易いもの。かまぼこ状のもの。パン・こうや豆腐などのスポンジ状のもの。ごぼう・ぼそぼそした肉や魚などの繊維状のもの。麺類などの様な水分の中に固形物が混在したもの。辛い物など刺激の強いもの等があります。これ等の食品にもとろ味を付ける工夫により食べ易くなる場合もあるようです。

 誤嚥性肺炎の予防に関わる研究結果をみると、有歯顎者と無歯顎者の肺炎の発症率を比較したところ、両者の間には差は無く、また有歯顎者・無歯顎者とも口腔内を清潔に保っている人では発症率が低いことが解りました。有歯顎者・無歯顎者に関わらず、口腔内を清潔にすることにより、発熱や肺炎の発症が低下したことは誤嚥性肺炎の発症は、口腔内の細菌の種類によらず、その誤嚥量による可能性が高いことが解ります。

 無歯顎者の口腔清掃法として、歯ブラシを使用した場合と、綿棒による清拭では、細菌学的に効果を調べると、ブラッシング後は細菌数が減少したのに対し、綿棒による方法では、1時間後にはむしろ細菌数が増加していて、両者間の効果の差が大きかったとの報告が有ります。
肺炎を防ぐには、有歯顎・無歯顎を問わず、感染予防を念頭に置いた口腔ケアが大切であるということが言えます。