歯 科

咀嚼(そしゃく)の重要性(Ⅲ)
歯学博士
飯田 一実

咀嚼の重要さイメージ

 最近生活習慣病という言葉を良く目にしたり、耳にしたりすることが多いと思いますが、ムシ歯も又生活習慣病の一つと考えられます。

 健康な歯を残すことは、咀嚼や発音などの機能が十分に発揮できることになり、私たちが健康に過ごすためには是非必要なことです。
良く噛まない軟食は咀嚼運動が低下して、口の周囲の筋肉も活動せず、唾液の分泌が減じ、ムシ歯・歯周病・歯列異常などを起こすと云われています。

 良く噛むことは胃液の分泌を促し、消化吸収を助け、唾液を良く出すことになります。
唾液の成分の中には疾病の予防や健康増進に役立つ物質が含まれています。
食事時間を十分にとり、良く噛むことによって満腹中枢を刺激し、過食・肥満を防止し、糖尿病の予防・治療にも役立ちます。
唾液を沢山出すことにより、食物の味物質を溶出し食欲を増進し、心理的満足感・情緒的豊かさを感じさせます。又脳の血流量を増やし、知的発達を促し、老化防止にもなります。

 咀嚼運動は哺乳運動と異なり、学習によって得られる能力です。従ってこれらは成人になってから始めたのでは遅く、子供の頃からの学習が必要です。

 ムシ歯の予防には単に甘いものを制限するだけでなく、甘いものを食べても良く唾液が出ていれば洗い流され、又食後のブラッシングをしっかりするという良い習慣を身につけることが必要です。「お口を通して家庭が見える」と言った担任の先生がいましたが、家での躾が大切であると云うことでしょう。

 情緒的に不安定な子もムシ歯の発生が多いと云われています。健全な家庭環境が大切であると思います。
運動選手が能力を十分発揮するためには、しっかり噛みしめれる健康な歯が必要であり、日頃から歯の手入れには十分気をつけているようです。私たちが健康な生活を送るためにも同じ事が云えます。又喫煙は歯周病の治療効果を妨げるので禁煙することが大切です。

 京都大学名誉教授の大島 清先生の著書によりますと、人間の歯の形態から考えて大臼歯と犬歯の割合から、穀物と肉類を取る割合は3対1が良く、これが一番理にかなっているようです。
人間の歯や顎の関節の動きや構造は、穀類を良くすりつぶして食べるように出来ているので、良く噛むことが大切であり、また穀類の多い日本食は理想的な食べ物と云えそうです。
肉食動物は犬歯で肉を引き裂き、飲み込むだけなのですが、私達は会話を楽しみながら、ゆったりとした気持ちで十分時間をかけて食事をすることが大切です。

 早食い、粗(アラ)噛みをする時、人の姿勢は前こごみになって食べ物をかき込みますが、ていねいに噛む人は姿勢が良く、背中がぴんと伸びているものです。
正しい姿勢は体のバランスも良くとれていて、健康を保つのに役立ちそうです。
良く噛んで健康寿命を延ばしましょう。