歯 科

咀嚼(そしゃく)の重要性(I)
歯学博士
飯田 一実

咀嚼の重要さイメージ

 厚生労働省が提案している運動に、80-20運動があります。これは80歳で20本の歯を残そうということです。20本の歯があれば食事に不自由なく噛むことができます。しかし現在の日本人の状態は80-8.2です。

 80-20を達成するためには、学童期からの歯の手入れをする心掛けが必要で、大変息の長い運動です。
現在日本人の平均寿命や健康寿命は世界一ですが、歯に関しては後進国ということです。

 歯肉炎は歯垢を取り除くことによって見違えるほど歯肉の健康を取り戻せます。鏡を見ることによって自分で確認できるので自分の身体の健康は自分で守るという自覚が出来、教育の面からも大切なことと思われます。大人に成って歯周病になった時も只医者まかせで歯肉の手術を受けても効果は無く、術前、術後ともブラッシングを良く行い、歯垢を取り除き常に口の中を清潔にしておかなければ、せっかくの手術も無駄に終わります。歯を失う原因の一つですので普段から気をつけましょう。

 高齢で寝たきりに成っても、点滴でなく自分の口で食べることによって体力が回復した例が多いのは大切なことと思われます。食べることは歳をとってからの大きな楽しみの一つに挙げられます。
噛むことによって顔の筋肉も衰えず、張りのある生き生きとした表情を保てます。

 一方最近は、噛まない子・噛めない子・飲み込めない子が増えて来ています。穴が大きく楽に飲める哺乳ビンの吸い口にも問題がありそうです。母乳の場合は口の囲りの筋肉を十分使って吸うことが、後に噛むことの準備をしていることになります。
その他の原因として、離乳食を与えるのが早すぎることが指摘されています。食べ物を噛む能力の発達には、口唇食べが第一で次ぎは舌食べ、その後に歯ぐき食べ、そして乳歯食べという段階があります。
乳臼歯が生える前に離乳食を与えるので、食べ物を噛む準備状態が不足しています。噛むことにも訓練が必要であるということです。

(次回は噛むことや唾液の効用についてお話します)