泌尿器科

前立腺肥大症と前立腺癌
芸術の森泌尿器科
院長 斉藤 誠一
1.前立腺について

 前立腺は男性にしかない臓器で、精液の一部を作る働きをしています。膀胱のすぐ下にあり、オシッコの通り道をぐるりと囲んでいます。前立腺肥大とは前立腺が大きくなって尿の通り道をしめつけ、尿を出にくくする病気です。
 高齢化と食生活の変化から、55歳を過ぎた男性の5人に2人がかかる病気となってきました。

2.前立腺肥大症の病状とは

 夜中に2回以上おしっこに起きるようになったら要注意です。さらにすすむとおしっこの出がわるく、勢いがなくなってきます。また、おしっこをがまんできなくなります。
 実際に自分がどの程度かを判定するには、国際前立腺症状スコアがありますので、自己採点されるとよいでしょう。8点を超えたら要注意です。

3.50歳以上の男性に多い前立腺肥大の原因は。

 完全にわかってはいません。欧米型の食生活が影響しているといわれています。

4.前立腺肥大の予防について

 残念ながら確実な予防法はありません。日常生活で注意して、症状が悪くならないようにするためには以下のことが大切です。

  • 尿を我慢しない
  • 便秘にならないようにする
  • 冷えや運動不足にならないようにする
  • 長く座ったり、乗り物に乗って同じ姿勢でいたり、自転車に長く乗ることは避ける
  • 深酒をしない
  • かぜ薬や胃腸薬、循環器の薬の中にはおしっこの出を悪くするものがあるので医師とよく相談する
5.前立線肥大の現在の治療法(薬・手術)

 薬には尿道をゆるめておしっこを出やすくする薬が最初に用いられます。また、男性ホルモンを抑えて前立腺を小さくする薬があります。

 薬で効果が得られない場合、次のステップに移るわけですが、今までいろんな治療が次から次へと試みられ、淘汰されてきました。現在もたくさんの方法が行われていますが、大きく分けると高温度治療、レーザー治療、内視鏡的手術に分けることができます。
まず、高温度治療ですが、外来的に行われ、1時間1回で終わります。患者さんは車を運転してそのまま帰宅することができます。前立腺内部を45度以上に加温し、前立腺を小さくすることが目的ですが、夜の頻尿やおしっこのもれなどの症状はよくなります。レーザー治療は前立腺の内部でレーザー照射を行い、内部に焼けどを作って小さくしようという試みです。外来でも入院でも可能ですが、一時的に前立腺が腫れおしっこが出にくくなるため、ゴムの管が尿道に入り約1週間生活しなければなりません。

内視鏡的手術はおなかを切らないで尿道の方からカメラを挿入し切り取る方法で、主に電気メスで行われています。最も確実に症状の改善をもたらしますが数日間の入院が必要です。最近はホルミウムレーザーを用い、前立腺組織を切り取る方法が行われており、管も1日で取れ、2,3日の入院ですむようになってきました。

6.前立線肥大との関係(肥大が進行して癌に?)

 前立腺肥大から癌になることはありませんが、肥大と癌が同時に存在することはあります。癌で注意しなければならないのは、肥大症とは違い、早期には症状がないため、気がつきにくいことです。ほおっておくと、尿道が圧迫されるようになり、肥大と同じ症状が出現していきます。癌を克服するための第一は早期発見、早期治療です。50歳を過ぎた男性は年に1度の検診をおすすめします。前立腺癌は、自分では見つけにくい病気ですが、定期的に検診を受けていれば早期に発見することができます。

7.前立線癌の今後の見通し

 前立腺癌は欧米諸国の男性の癌の中で一番多く、死亡原因の約20%を占めています。日本でも年々発生率と死亡率は上昇し、21世紀の日本において大問題となる可能性があります。早期発見のための検査として、直腸診、超音波検査、血液検査(PSA測定)が行われます。これらの結果が疑われる場合、組織検査が行われます。組織検査は外来で簡単な麻酔下に超音波装置を使って行われます。なお、癌は栄養血管が豊富な組織であるため造影剤で血管豊富なところを描出し、そこを中心に組織検査ができるパワードップラーは癌の発見に非常に有用です。

 早期癌であれば、手術が最も確実な方法になります。手術法にはお腹を切る方法、股の部分を切る方法、腹腔鏡を用いて5箇所の穴をあけて行う方法があります。お腹を切る方法は現在世界一般に行われており、リンパ節の検査が同時にできますが出血、時間、傷が大きいのが難点です。腹腔鏡手術は将来有望な方法ですが、現時点では時間がかかり、確立された方法とはいえません。私としては股の部分に小さな切開を加えて行う手術が、出血、時間の面からも一番からだにやさしい方法と考え、行っています。ただ、リンバ節の検査ができないために全例に適応にはなりません。

8.前立線癌の予防

 低脂肪食で緑黄色野菜を多く摂る地域では前立腺癌の発生は少ないことがわかっています。食生活で注意することは脂肪、肉類の摂取を減らし、大豆、トマトなどの緑黄色野菜、緑茶の摂取を多くすることです。